実はインドの1月は、お祭りで大忙し。
日本では「お正月が終わったら、しばらく静かな時期」という感覚が強いですが、インドの1月はその逆で、年明けからほぼ途切れなく、何かしらの行事が続いていきます。
太陽の動きを祝う日、収穫に感謝する祭り、春の始まりを告げる行事、学びや知性を讃える儀礼。
テーマはさまざまですが、どれも「季節の切り替わり」を大切にするインドらしい行事ばかりです。
SNSで
「今日は〇〇の日らしいけど、何のお祭り?」
「1月なのに、もう春の話をしている?」
と戸惑ったことがある人もいるかもしれません。
この記事では、インドの1月に行われる主なお祭りを、時系列でまとめて紹介します。
「全部覚えなくていいけれど、こういう流れがあるんだな」と感じてもらえたら十分です。
日本の1月とは少し違う、インドの時間の進み方。
その空気感を、ゆるく覗いていきましょう。
🧭 はじめに|インドの1月は「季節が切り替わる月」
インドの1月は、ただの「年明け」ではなく、季節が切り替わっていく月として捉えられています。
太陽の動きや収穫の区切り、冬の終わりと春の始まり。そうした節目が重なるため、地域ごとに形は違っても、1月は行事が続く季節になりやすいのです。
日本のカレンダー感覚で見ると、1月はまだ「真冬」。でもインドでは、1月中旬に太陽の転換点を迎えたり、南では収穫祭が行われたり、北では焚き火を囲む冬の終わりの行事があったりと、冬の終盤から次の季節へ移っていく空気が強くなります。
この記事では、インドの1月に行われる主なお祭りを、だいたいの時系列で並べて紹介します。
細かい違いまで覚える必要はありません。「1月の中に、こういう流れがある」という輪郭がつかめれば、それだけでインドの季節感が少し身近になります。
🔥 1月13日頃|ローリー(Lohri)
ローリー(Lohri)は、北インドを中心に行われる「冬の終わり」を告げるお祭りです。
毎年1月中旬、太陽が少しずつ力を取り戻し始める頃に行われ、寒さのピークを越える合図のような存在として親しまれています。
この日は、屋外で焚き火を囲みながら、ゴマ菓子やピーナッツ、ポップコーンなどを火にくべ、太陽・火・収穫への感謝を捧げます。
火は単なる暖を取るものではなく、冷えや停滞を焼き払い、次の季節へ進むための象徴でもあります。
ローリーは、翌日に行われるマカラ・サンクランティ(太陽の転換点を祝う祭り)の前夜祭のような位置づけでもあり、
「冬から春へ」「停滞から循環へ」向かう境目の夜として大切にされてきました。
日本の感覚で言えば、年始の静けさの中で「そろそろ空気が変わり始めるな」と感じる瞬間に近いかもしれません。
インドの1月は、こうした火と太陽の行事を皮切りに、少しずつ季節が動き出していきます。
☀️ 1月14日頃|マカラ・サンクランティ(Makar Sankranti)
マカラ・サンクランティは、太陽が山羊座(マカラ)に入る瞬間を祝う、インド全土で行われる重要な節目の行事です。
ヒンドゥー暦において「太陽が北へ向かう転換点」とされ、季節と運気が上向きに切り替わる日として広く知られています。
地域によって呼び名や祝い方はさまざまで、
北インドでは「マカラ・サンクランティ」、
南インドでは「ポンガル」、
西インドでは凧揚げが盛んな「ウッタラヤン」など、同じ日をそれぞれの文化で祝います。
共通しているのは、太陽・光・収穫への感謝というテーマ。
ゴマ(ティル)とジャグリー(黒砂糖)を使ったお菓子を食べたり、
「甘く、やさしく生きよう」という意味を込めて人に分け合う習慣もあります。
ローリーが「夜の焚き火」で冬を送り出す行事だとすれば、
マカラ・サンクランティは太陽の力を正面から迎え入れる昼の祝祭。
インドの1月は、この2日間を境に、空気や人の気持ちが少しずつ前向きに切り替わっていきます。
日本の暦で言えば立春に近い感覚ですが、
実際の気温はまだ低く、「体感の冬」と「暦の春」がずれる時期。
だからこそ、この日は「始める」よりも、光の方向を向き直す日として大切にされてきました。
🌾 1月14日〜17日頃|ポンガル(Pongal)
ポンガルは、南インド(特にタミル・ナードゥ州)で行われる、最も重要な収穫祭のひとつです。
マカラ・サンクランティと同じ時期に行われますが、こちらは数日間にわたって祝われる生活に根ざしたお祭りという特徴があります。
「ポンガル」とは、本来「煮こぼれる」「溢れる」という意味。
新米を牛乳と一緒に炊き、鍋から溢れさせることで、豊穣・繁栄・恵みが満ちることを象徴的に表現します。
ポンガルは通常、以下のような流れで祝われます。
- 1日目:ボギ・ポンガル – 古いものを手放し、新しい季節を迎える日
- 2日目:タイ・ポンガル – 太陽神に感謝を捧げ、新米のポンガルを炊く中心日
- 3日目:マットゥ・ポンガル – 牛や家畜に感謝する日
- 4日目:カーナム・ポンガル – 家族や地域で集い、交流を深める日
この期間、家の前にはコーラム(米粉で描く模様)が描かれ、
日常の延長線上で、「生きていること」「支え合っていること」への感謝が丁寧に表現されます。
ローリーやマカラ・サンクランティが「太陽の転換点」を祝う行事だとすれば、
ポンガルは実際の暮らしと収穫を祝う、非常に現実的で温度のあるお祭り。
インドの1月が「季節の切り替え」であることを、最も生活感をもって伝えてくれる行事と言えるでしょう。
🌑 1月18日頃|マウニ・アマヴァシャ(Mauni Amavasya)
マウニ・アマヴァシャは、新月(アマヴァシャ)に行われる、静けさと内省を大切にする行事です。
「マウニ」とは「沈黙の人」という意味を持ち、この日は言葉や行動を最小限にし、内側に意識を向ける日とされています。
インド各地で行われますが、特に有名なのは、
ガンジス川などの聖なる川での沐浴(スナーン)。
身体を清めると同時に、心のざわめきや執着を手放す意味が込められています。
ローリーやマカラ・サンクランティ、ポンガルといった
賑やかで外向きのお祭りが続いた後に訪れる「静の行事」である点も特徴的です。
1月の後半は、インドの暦の中でも、一度立ち止まり、内側を整える時間が意識的に組み込まれています。
日本の感覚で言えば、
年始の慌ただしさが一段落し、ふと疲れや空白を感じやすい時期に近いかもしれません。
マウニ・アマヴァシャは、「何かをする日」ではなく、何もしないことに意味がある日として受け取られています。
インドの1月は、祝う・集う・動くだけで終わらず、
こうした沈黙と余白の時間を含めて、季節の切り替えが完成していきます。
🛕 1月上旬〜2月中旬|マグ・メーラ(Magh Mela)
マグ・メーラは、1月上旬から2月中旬にかけて行われる、大規模な巡礼と沐浴の期間です。
特に有名なのは、ガンジス川・ヤムナー川・サラスヴァティー川が合流するとされる
プラヤーグラージ(旧アラーハーバード)で行われるもの。
この期間は、ヒンドゥー暦の「マグ月」にあたり、
一年の中でも特に浄化の力が高まる時期と考えられています。
人々は川での沐浴、断食、祈り、施しなどを行い、
心身を清めながら、新しい流れへと自分を整えていきます。
マグ・メーラは、12年に一度のクンブ・メーラほど派手ではありませんが、
より生活に根ざした、毎年繰り返される巡礼行事として続いてきました。
多くの修行者や聖者が集まり、川辺には一時的な街が形作られます。
インドの1月〜2月は、
ローリーやマカラ・サンクランティといった太陽と収穫の祝祭と、
マウニ・アマヴァシャやマグ・メーラのような浄化と内省の時間が、
同じ暦の中に共存しているのが特徴です。
季節の切り替わりは、ただ賑やかに祝うだけでなく、
身体と心を洗い直し、静かに流れに戻ることでもある。
マグ・メーラは、そのことを長い時間をかけて体感させる行事と言えるでしょう。
🌼 1月23日頃|ヴァサント・パンチャミ(Vasant Panchami)
ヴァサント・パンチャミは、「春(ヴァサント)の始まり」を告げる行事として知られる日です。
ヒンドゥー暦のマグ月・白分の五日目にあたり、1月下旬〜2月上旬頃に巡ってきます。
この日は、学び・言葉・音楽・芸術を司る女神サラスヴァーティーを讃える日としても大切にされ、
学校や家庭では、本や楽器、筆記具などを清めて祈りを捧げるサラスヴァーティー・プージャーが行われます。
ヴァサント・パンチャミを象徴する色は黄色。
菜の花やマスタードの花、やわらかな日差し、
そして知性や明晰さを表す色として、服や食べ物にも黄色が取り入れられます。
サフラン(ケサリ)を使った料理やお菓子が並ぶのも、この日の特徴です。
ローリーやマカラ・サンクランティが「太陽の向きの変化」を祝う行事だとすれば、
ヴァサント・パンチャミは人の内側に芽生える「始まりの気配」を祝う日。
寒さの中に、わずかな軽さや前向きさが混ざり始めるタイミングに位置しています。
インドの1月は、火・太陽・浄化・沈黙といった要素が次々に現れ、
このヴァサント・パンチャミでようやく、「春へ向かう意識」がはっきりと姿を現します。
季節が切り替わる過程を、段階的に体感させてくれる行事のひとつです。
🇮🇳 1月26日|インド共和国記念日(Republic Day)
1月26日は、インド共和国記念日。
1950年にインド憲法が施行され、インドが正式に共和国となったことを記念する、国家的な祝日です。
この日は宗教行事ではありませんが、
インドの1月を語るうえで欠かせない、非常に大きな節目でもあります。
ニューデリーでは盛大なパレードが行われ、
軍事・文化・各州の伝統が一堂に会する様子は、国内外に向けた「インドという国の自己紹介」のような意味合いを持っています。
1月前半に続くローリー、マカラ・サンクランティ、ポンガルなどが
太陽・収穫・自然との関係を祝う行事だとすれば、
共和国記念日は、人が作った「国家」や「社会」のかたちを確認する日。
自然のリズム、宗教的な時間、内省の行事が続いた1月の終盤に、
あらためて「今、どんな国として生きているか」を示すこの日が置かれているのは、
インドの暦の流れとしても印象的です。
インドの1月は、季節・信仰・社会が折り重なりながら切り替わっていく月。
共和国記念日は、その締めくくりとして、
「次の一年を、どんな土台の上で生きていくのか」を静かに示しているようにも感じられます。
🌅 おわりに|インドの1月は「始まりが重なる月」
インドの1月は、ひとつのお祭りだけで語れる月ではありません。
火を囲む夜があり、太陽を迎える日があり、収穫を祝う時間があり、
そして、沈黙し、内側を整える日もあります。
自然のリズムに合わせた行事、
信仰として受け継がれてきた時間、
国としての節目を確認する日。
それらが同じ月の中に折り重なっているのが、インドの1月の特徴です。
日本の1月は「静かな始まり」の印象が強いかもしれませんが、
インドの1月はむしろ、季節・信仰・社会が同時に切り替わっていく、動きの多い月。
どれかを全部理解しなくても構いません。
「こういう流れがあるんだ」と知るだけでも、
ニュースやSNSで見かける言葉や風景の見え方は、少し変わるはずです。
もし気になる行事がひとつでもあれば、そこから覗いてみる。
それくらいの距離感で、インドの暦やお祭りに触れてもらえたら嬉しいです。
季節の変わり目を、どう迎え、どう手放すのか。
インドの1月は、そのヒントをたくさん含んだ月なのかもしれません。


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