インドの2月は、日本の感覚でいう「お祭りシーズン」とは少し違います。
年明けの賑やかさが一段落し、空気も人の気持ちも、どこか内側へ向かい始める時期。
1月のお祭りについては前回の記事でご紹介しています。
実はこの2月、インドでは
静かに祈る日、
言葉を慎む日、
夜を越えて過ごす日など、
派手さよりも「整えること」を大切にする行事がいくつも重なっています。
春の入口に立ちながら、まだ寒さが残るこの季節。
動き出す前に、一度立ち止まって心と身体を調える――
そんな時間を与えてくれるのが、2月の祭りたちです。
今回は、インドで2月に行われる主な行事を、時期の流れに沿ってまとめて紹介します。
すべてを知る必要はありませんし、実際に何かをしなくても大丈夫。
「この時期、インドではこんな空気が流れているんだ」
そう知るだけでも、季節の感じ方が少し変わるはずです。
ここから先は、2月に行われる代表的なお祭りを、ひとつずつ見ていきましょう。
🌼 2月上旬|ヴァサント・パンチャミ
ヴァサント・パンチャミは、「春の訪れ」を告げる行事として知られています。
まだ寒さが残る時期ではありますが、インドではこの日を境に、季節の流れが冬から春へと切り替わると考えられています。
同時に行われるのが、サラスヴァーティー・プージャー。
学び・芸術・言葉・音楽を司る女神サラスヴァーティーに祈りを捧げ、
知性や感性が澄んで流れることを願う日でもあります。
この日は、勉強道具や楽器、本などを清めて供えたり、
「新しいことを始める」「学び直す」きっかけの日として大切にされることも多く、
派手なお祭りというよりは、静かに整えるための節目という雰囲気を持っています。
春に向かう前のこのタイミングで、
心や思考の向きをそっと調え直す。
ヴァサント・パンチャミは、そんな意味合いを持つ一日です。
🕯️ 2月の新月頃|マウニ・アマヴァシャ
マウニ・アマヴァシャは、「沈黙(マウナ)」を大切にする特別な新月です。
ヒンドゥー教の暦の中でも、内側に意識を向ける力が強まる日とされ、
外に向かって何かを表現するよりも、静かに過ごすことが勧められます。
この日は、聖なる川での沐浴や、断食、言葉を慎む行いなどが行われます。
特に「話さないこと」そのものが修行とされ、
思考や感情のざわめきを鎮めるための時間として位置づけられています。
お祭りらしい賑やかさはほとんどなく、
どちらかといえば内省と浄化のための一日。
新月という区切りと重なり、不要なものを手放し、
心身をリセットする意味合いが強い行事です。
2月という、寒さと重さが残る季節の中で、
あえて立ち止まり、静けさに身を置く。
マウニ・アマヴァシャは、そんな「余白」を思い出させてくれる日でもあります。
🌊 1月中旬〜2月中旬|マグ・メーラ
マグ・メーラは、聖なる河で行われる巡礼と沐浴の祭りです。
北インドのプラヤーグラージ(旧アラハバード)を中心に、
ガンジス川・ヤムナー川・サラスヴァティー川が合流するとされる場所で行われます。
この祭りの中心は、冬の間に溜まったものを洗い流すための沐浴。
特にマグ月(1月中旬〜2月中旬)は、
一年の中でも浄化の力が強いと考えられており、
多くの巡礼者が寒さの中でも川に身を浸します。
よく知られているクンブ・メーラと混同されがちですが、
マグ・メーラはより定期的に行われる、落ち着いた巡礼行事。
クンブ・メーラが数年に一度の大規模な祭りであるのに対し、
マグ・メーラは毎年同じ時期に行われ、修行や祈りの性格が強いのが特徴です。
冬の終わりにあたるこの時期は、
身体にも心にも「重さ」が残りやすい季節。
マグ・メーラは、その重さを手放し、新しい季節へ向かう準備をするための祭りとして、
静かに、しかし確かに意味を持つ行事です。
🌑 2月中旬〜下旬|マハー・シヴァラートリー
マハー・シヴァラートリーは、シヴァ神を讃える「大いなる夜」と呼ばれる行事です。
毎年2月中旬〜下旬、新月の夜に行われ、
ヒンドゥー教の中でもとても重要な位置づけを持っています。
シヴァ神は、破壊と再生を司る神。
ここでいう「破壊」とは、壊すことそのものではなく、
不要になったものを終わらせ、新しい流れを生むための手放しを意味します。
マハー・シヴァラートリーは、
一年の中でも特に内側に向かう力が強まる夜とされ、
欲や執着、疲れ、思考の癖などを静かに見つめ直すタイミングでもあります。
この日は夜を越えて祈ることが特徴的です。
眠らずに過ごすことで意識を研ぎ澄まし、
暗闇の中でこそ現れる変化や気づきに身を委ねる——
そんな意味合いが込められています。
冬から春へと向かう境目に訪れるマハー・シヴァラートリーは、
季節の切り替わりと心の切り替えを重ねるような行事。
派手さはありませんが、静かに深く作用する祭りです。
🎭 地域によっては|ロサール(チベット暦の新年)
ロサールは、チベット暦に基づく新年で、
インド全土というよりは、ラダックやヒマラヤ周辺地域を中心に祝われる行事です。
これらの地域では、ヒンドゥー教だけでなく、
チベット仏教(ラマ教)の文化が生活に深く根づいています。
ロサールは、そうした仏教文化圏ならではの2月の節目として位置づけられています。
期間中は、家や寺院を清め、
新しい年のための祈りや儀式が行われます。
地域によっては、仮面舞踊(チャム)などの宗教的な舞や行列が見られることもあります。
インドというとヒンドゥー教の祭りが注目されがちですが、
ロサールの存在は、この国が多様な文化と暦を内包していることを改めて感じさせてくれます。
同じ2月でも、地域によって迎えている「新年」や「節目」はさまざま。
ロサールは、インドの奥行きと多層性を象徴する行事のひとつです。
🌙 まとめ|2月は、静かに切り替わる月
2月のインドには、
派手な祝祭よりも、内側に向かう行事が多く並びます。
春の始まりを告げるヴァサント・パンチャミ、
沈黙と浄化を大切にするマウニ・アマヴァシャ、
夜を越えて祈るマハー・シヴァラートリー。
どれも共通しているのは、
何かを大きく始めるための準備であり、
心や環境をいったん整え直すための時間だということ。
1月のにぎやかな切り替えを経て、
3月のホーリーで一気に外へ開いていく。
その間にある2月は、
立ち止まり、手放し、次の季節に向かうための月です。
すべてを実践しなくても大丈夫。
「今はこういう時期なんだ」と知るだけでも、
日々の過ごし方は少し楽になります。
2月のインドのお祭りは、
静かに、自分の内側を見つめるためのヒント。
そんなふうに受け取ってもらえたら嬉しいです。




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